ヴィンテージワインの魅力
ワインの熟成は人生に似ている
無邪気で個性豊かな子供時代
活動的な成長期
経験を積んで落ち着き始める中年期
風格ある円熟期
ワインにも 熟成によってそんな人生に似た変化があります。
フレッシュでいくつものフルーツの香りがあふれ出し、色濃く鮮やかで味わいにも個性がある若いワインは、時の経過によってフローラルさやスパイシーさ、土、枯れ葉など土壌固有のニュアンスが全面に出てきます。彩度は落ち着き、個性は丸くなりハーモニーとなります。
円熟期では飾り気は控えめになり、その反面に複雑さが増してゆきます。
さらには、時間を掛けて味わうと、果実香をフッと放ち派手だった若い頃をワインが語り出す瞬間もあります。
香りや味わいを記憶の中から探り出す、というワインを味わう行為が、同時に自分の人生を振り返ることと重なり、よみがえる様々な瞬間の記憶に胸が熱くなります。
深い味わいに これまでの人生を重ねて思いを巡らす時間
そんな時を過ごすことができるのがヴィンテージワインの魅力なのです。
◇熟成の面白さ
ワインは熟成中に成長する時期や眠る時期があるのをご存じでしょうか。
人間と同じように成長の過程に変化があり、生きもののような面白みがワインにもあります。
「3年前に飲んだ時は渋かったけど、今日飲んだら口当たりが柔らかかった」とか、「昨日と今日とでは味が変わった」など。
同じワインを飲んでも飲むタイミングによって異なる印象を感じる「ミステリアスさ」が熟成したワインの面白さでもあります。
◇Vintage
ヴィンテージという言葉はフランス語で収穫を意味するvendange(ヴァンダンジュ)に由来しています。
時計や車、楽器、ジーンズなどで「ヴィンテージ」というと、特定の年に造られた上等なものを想像させられる付加価値のついた品物の意味あいがあります。
ワインについて「ヴィンテージ」というと、かつては「当り年の古いワイン」を指しましたが、今ではワインやブドウの出来具合にかかわらず、使われているブドウの収穫年を明示する意味で表示項目の一つのように一般的なフレーズになっています。
◇ボルドーワインのヴィンテージ背景
かつて、天気の予報技術や情報網、対応策は不完全でした。
また、農産物であるブドウの栽培や醸造に使う道具や設備も無かった頃は、ワインの出来は生産者の知識や熟考、労働によるところが大きく、当りはずれの振れ幅が大きかったのは仕方ありません。
ワインは人間が造り出す産物だったのです。
ボルドー地方でのワイン造りの時代背景を振り返ってみましょう。
「ヴィンテージ背景」
◇ワインの飲み頃とは
飲み手の嗜好が異なるため、ワインの飲み頃という明確な定義はありません。
一般的には、
「果実味を僅かに残した熟成感」が好まれますが、
「腐葉土のような枯れたニュアンスこそがヴィンテージワインの魅力」
といういう人もいて、やはり個人差があります。
また、飲み頃といっても、銘柄によっては数十年間に及ぶものもあります。その間にも味わいは変化を続けています。
「年ごとに異なる天候の難しさ」&
「それに対する生産者(人間)の努力」&
「飲み手の記憶と嗜好」
とのコラボレーションで「飲み頃」が決まります。
ヴィンテージワインの中には、長い眠りから目覚めるのに時間がかかるボトルもあるのです。
一口飲んで好みの味わいでなくとも、すぐに失敗したと決めつけず、しばらくそっとしておいてみてください。数十分後、数時間後に再びチャレンジしてみてください。
寝起きが不機嫌なボトル、起床に時間がかかるボトル、飛び起きるボトル
人間のようにいろいろなタイプがあるのです。
今回はどうにも口に合わなくても、次の機会には感動的な出合いが待っているかもしれません。
この辺りもヴィンテージワインと人生の似た面白さでもあります。