地勢
地勢について
スキーやスノーボードをしたことのある方であれば、雪の硬さや残雪量などの違いですぐにご理解いただけることだと思いますが、昼間の日光は大地に一様に降り注いでいる訳ではありません。
移動が許されないブドウにとって、畑の方角(東西南北のどの方角に向いているのか)、標高、傾斜角は毎日の日光との関係がそのまま反映される要因になります。
つまり微妙な気候条件がその土地固有に存在します。
南向きの斜面は日光の恩恵を最大限に受けます。そして東向きの斜面は霜に強く、西向きの斜面は比較的強い日差しを受けます。
写真:ロマネ・コンティの畑の地勢
一般の方にとっての漠然とした「土地に傾斜がある」という状態が、樹上に実を結ぶ植物にとって「太陽の入射角との関係」や「傾斜による水捌けの違い」、そして「風当たり」になってしまうのは興味深い事実です。
土地の傾斜は日当たりと水捌けを左右し、風当たりも決定付けます。
太陽は季節によって角度を変えて日ざしを降り注ぎます。日照量は「土地の傾斜角と太陽光の入射角との交点」にもたらされる訳で、傾斜角に左右されて地中深く目指して恵みが届きます。
ブドウ畑の傾斜地に「土地のくぼみがあること」が要因で、特級畑になれずに第1級畑になってしまったのだろうと推測される場所がブルゴーニュ地方には散見されます。
水捌けは単に水だけを運んでいる訳ではありません。
土中の栄養素も一緒に運ぶので傾斜の最下部には栄養素が溜まりやすく地面に深く根を張らずに済んでしまい、地層深くにあるミネラル分の含有量が少なくなってしまうことがあります。
傾斜が大きい土地が風上に向いている場合には、傾斜があることにより、さらに一層風を強く受けます。
土地の高度差は気温差をもたらします。
高地は低地よりも気温が低く、風通しも良いので、緯度の割りに冷涼な気候環境で生育できます。
標高が高すぎる場合には熟すのに必要な高温が得られないことで多いデメリットが発生します。
海や山、大きな河川や湖が付近にある場合などでは、畑固有の方角によって、日光以外の様々な要素がさらに加わります。
川の水の動きですらブドウに影響することがあります。川の水の流れが空気の流れを作り、遅霜の害を減らします。
日照量の不足に悩む高緯度のドイツ・ラインガウでは川面からの照り返しが日照量を増加させます。
変わり種としては、水蒸気による湿度は極上甘口のソーテルヌ地区などに貴腐菌の発達を促進させたりもします。