感想

1943年 シャトー クリマン(フランス )の感想

ご購入者様の許可を頂いた上で掲載させていただいております。
ヴィンテージワインご購入の参考にご利用ください。

2004-05-27投稿

franceフランス産ワインについての感想

1943年 シャトー クリマン (フランス )

「誕生日」「還暦祝い」「家族ギフト」「父へのプレゼント」

ハピネス指数

父が還暦を迎えようとしていました。

幼少の頃ならいざしらず、それ以降、家族で贈り物をしあうということが私の家ではありませんでした。誕生日も母の日もです。

もちろん「父の日」にも、これまで特別に何かするようなことはなく、結婚前の連休に婚家へ引っ越ししたため、結婚式当日の「両親への感謝の挨拶」などというものも、すっとばして今に至っていました。

多分、私のことだから、今後もとりたてて何か父へ感謝を表すということなどはしないことでしょう。

父が生まれたのは1943年。第2次世界大戦中です。戦禍にみまわれたのは、ヨーロッパも同じこと。

60年の時を経て残ったワインは、私一人でプレゼントするには高価なものでした。けれど、兄弟みなで贈るには、「贈る気持ち」に、ばらつきがありすぎます。

そこで、これまでの総決算、あわよくば今後の分も含めるつもりで、清水の舞台から飛び下り、ひとりで贈ることにしました。



父は救急病院の脳外科医だったため、夜中でも電話一本で病院へ常に駆け付けていました。いつでも、車が運転できるよう、そしてメスが握れるよう、お酒は飲みませんでした。

ようやくこの数年、優秀な部下にまかせ、よほどのことがない限り、深夜病院へ行くこともなくなりました。

もともと、それほどお酒は強くもないし、好きでもないのでしょう。350mlの缶ビール1缶も飲み切れず、飲むのも手のひらに乗るような小さな缶ビール。

お正月や何かのお祝いごとなどで、家で家族と乾杯、なんて場合はドイツの甘い白ワインを少し飲むくらいでした。

注文の際、そんな父の好みともいえないような、控えめな飲みっぷりを伝えたら、勧めて頂いたのが、シャトー・クリマン。

ラベルの古さなどは味わえないけれど、リコルクされているので、コンディションには間違い無いし、これがいいのではないか、とのこと。それに即決しました。



還暦を迎えるのは秋ですが、その際は数少ない親戚が集まって、どこかへ食事に行くことでしょう。

その際に贈ってしまうと、うまく気持ちが伝わらないような気がして、年号ワイン大作戦は父の日に決行することにしました。

「今まで、パパに何もしてこなかったし、これからも何もしないと思うから、私にできる最初で最後の親孝行だと思ってね」と軽口たたきながら、綺麗に包装されたワインを渡すと、父は「五つ子くらい産め」と憎まれ口を返しながら、包みを開けました。

「あー、これ、なかなかないんだよな。戦争中だったし。飲もうか!」

実はかつて、1943年のワインをもらったことがあり、その際、どんなに貴重か長々と説明を受けていたのでした。

そのワインは母がしまいこんだまま、どこへ消えたか不明。多分、母はなにもわからず、誰かにあげちゃったのでしょう。だから、1943年のワインを飲むのはこれが初めてとなりました。

やはり、私達親子のこと、しんみりするようなこともなく、父の思いで話も、「かつて貰ったことがあるが、どこへいったやら」という実に単純なものだけでした。

でも、お酒があまり好きとは言えない父が、にこにこして即座に飲もうと言い出したのは、かなり嬉しかったのだと娘の私にはよくわかりました。



さて、ワインですが、黄金色に輝いて、蜂蜜のように甘い味がしました。

父「へぇー、フランスワインなのに、こんなに甘いなんて、めずらしいね」

夫「(カトリック教会で行われる)ミサの時に使うワインみたいだな」

私「甘いけど、おいしいねぇ」

一口飲んだあとの感想はこんな感じ。モ-ゼルのような甘い白ワインが好み、と伝えて、これほどぴったりのワインを選んでくれた、和泉屋さんのアドバイスは驚く程、適格でした。


そして、年月の重みも稀少価値もゆっくり味わうように飲むわけもなく、がんがん飲んで、すぐに瓶は空きました。しかも、記念に、ラベルとコルクは私が持ち帰るという始末。

帰り道、夫が「いいなぁ、あんなワインが貰えて。自分の娘に貰いたいなぁ」と。娘がもてるかどうかわからないので、仕方がないから、その時はまた私があげるとするか。

和泉屋さん、その際はまた宜しくお願いしますね。



秋になり、還暦のお祝い会では、やはり父は皆から山のようにプレゼントを貰っていました。

弟のお嫁さんや伯父夫婦、従妹夫婦など、よその家はやはり贈り物をするようです。主人は何か贈ったほうが、と気を遣っていましたが、私は相変わらず、何も持っていきませんでした。

※『幸せの度合い』を示す”ハピネス指数”の最大値は★★★★★★★【7ハピネス】です。

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